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なうひあdiary

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ビリラの夢

2010/08/16(Mon) 16:46
アラゴンピレネー最後の宿は、中世の村 Sos del Rey Catolico ソス・デル・レイ・カトリコにあるツーリズモ・ルーラル El Sueño de Virila  。もとは8世紀にさかのぼるユダヤ教のシナゴーグ(集会礼拝所)で、16世紀には邸宅として使われ、その後は廃墟となっていたのを、今のオーナーのGuriさんが購入し、改築。1200年の時を経た石組みや梁はそのままに、モダンな宿として息を吹き返したのです。
建物は4階建てで、宿の裏手にある駐車場はオートシャッターつきのガレージ。でも、表は昔ながらの狭い路地(この村はアスファルトにせず、手間暇かけて石畳の道を保存しています)に面したアーチ型の扉。

客室やダイニングルームだけでなく、図書室や居間などのスペースもほとんどオープン。
昔ながらの石組みの建物に、モダンな家具、ポップなファインアートを配したセンス…すてきすぎます。
この丸いスチールの網の下は空洞。シナゴーグ時代は浴槽だったもので、その後はワイン樽として使われたとか。

宿になる前はスペイン内戦時を描いた映画『La Vaquilla(雄牛)』のセットとしても登場しました。

「この食器棚の下が隠し扉になっていて兵士から隠れたのよ」
と教えてくれたのは、マドリッド近郊から泊まりに来ていた若いご夫婦。朝食のサービスに忙しいGuriさんに代わって、この宿のエピソードをいろいろ教えてくれました。
お部屋もゆったり広々で、窓の外はテラス…ちょっと贅沢な雰囲気でしょ

そう、実はもともとこの宿に泊まる予定ではなく、もうひとつの中世の村 Uncastilloにあるツーリズモ・ルーラル Posada La Pastora を予約していました。ところが出発の2週間前になって「勘違いしていてこの日の宿泊は受けられなくなってしまいました。代わりに友だちのツーリズモ・ルーラルを紹介します。うちよりもグレードが高くて値段も高いけど(114ユロ)、差額はこちらで負担します」というのです。車で30分ほどしか離れていないし、ウェブサイトを見ると素敵な感じなのでお願いすると、すぐに El Sueño de Virila から、74ユロの予約確認書が送られてきました。
もし最初から El Sueño de Virila を知っていても、一泊100ユロ以上なので選択肢からはずれていたはず。そう思うと、なんだかこの歴史ある家に呼んでもらったようで、不思議な気持ちがするのでした。

というのも、ささいなことだけどちょっとおもしろいことがあったから。
実はこの日、8時頃には起きて村を散歩したりしようと思い、朝目が覚めて時計を見ると7時前。もう少し…と目を閉じて、5分か10分たったかな、と時計を見ると…なんともう10時! ! ! 3時間も経っていたのです。
まあ、よくあることといえばよくあることなのだけど…私が最初に時計を読み間違えたのかもしれません。
でも…帰ってきてからこの宿の名前 El Sueño de Virila 「 ビリラの夢」が気になり調べてみると、ナバラ王国の古い伝説が出てきたのです。それはこんな話でした。

神の神秘と真理を見せて欲しいと祈っていたビリラという悩める僧が、ある春の夕方、森に散歩に出て、泉のそばでうたた寝をしてしまう。数時間は経ったに違いないと修道院に戻ると、誰も知った人はいないし、室内の様子も変わっている。修道院長のところへ行ってその話をすると、修道院長はビリラを図書室へ連れて行き、古い記録を見せた。そこには300年ほど前、ビリラという僧が森に散歩に出て野獣に食べられたと書かれてあった。ビリラはその僧がまさに自分のことで、神は自分の祈りに応えてくれたのだと悟ったのだった…。

数時間と思っていたら300年が経っていたビリラ、数10分と思っていたら3時間が経っていた私たち。
この奇妙な符号は何でしょう? 同じ魔法にかかってしまったのかしら? 

もちろん、あまりに静かで落ち着く部屋だったので、単に寝過ごしただけなのでしょう。

それはともかく、ビリラの伝説にちなんで宿の名をつけたのかどうか、後日Guriさんにメールをして尋ねてみると、こんなお返事が返ってきました。

The name of the house, as well you thought, comes from the legend of Virila, as the house was asleep for many years waiting for someone to wake up.

On a holidays trip we knew Sos and immediately we fell in love with the village and wanted to save one of its noble houses of ruin with our effort and money in reconstructive approach the house back to its original appearance. As one who takes even the sick child, we adopted a ruined house and returned it to life.

Possibly the house appreciates the effort by providing the feeling of wellbeing that you've noticed.

長い年月、目覚めさせてくれるひとを待っていた家。そして中世の面影を色濃く残す村に一目惚れし、すばらしい歴史的遺産である廃墟のひとつを、自分たちの努力とお金で生まれ変わらせたい、と願ったGuriさん夫妻。病気の子供をひきとるようにこの家をひきとり、息を吹き返させた…という言葉にほろりとさせられました。


知的な物腰のFarnes さん。ご主人のJavier さんはこの日、バルセロナに行っていてご不在でした。

人が手を入れ、そこに住みながら、歴史ある建物や町並を生かしていくすがた。それも行政によってではなく、個人的な愛情とお金と労力をつぎこんで。古いものを大切にするというのはこういうことなんだなぁ…としみじみ感じたのでした。

そして the house appreciates…  という言い回しにも、思わずにっこりしちゃいました。古い家はひとつの人格を持っているのかもしれません。シナゴーグだったおうちさん、ほんとうに呼んでくれてありがとう♪
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'10ピレネー コメント:4 トラックバック:0
コメント:
--No title--

すてきなお話ですねぇ。
メールの内容がなんとも心温まりました。
私のアラゴンで泊まった小さな宿も
1件はぼろぼろの民家を改装したもの
もう1件は自分で作った家でした。
その一方で打ち捨てられ再生の手を
さしのべてくれるのを待つ古い石づくりの家が
多かったことか。
アニスクロ谷の細く草むした山道の奥で
石積みを再び並べなおして、
家を再構築しているのを見つけたときは
思わずじ~んとしました。
by: カヌ * 2010/08/16 21:17 * URL [ 編集] | page top↑
--No title--

ほんとですね、カヌさん旅行記のアニスクロの家々、目に焼き付いています。
素材が石、というのも保存再生に大きく貢献しているのでしょうが
日本でも古民家再生で、古い家の移転改築、梁など解体した木材を再利用する動きも広まりつつありますよね。
心をすさませるスクラップアンドビルドにくらべ、
保存再生する姿勢というのは、なんて豊かな気持ちにさせてくれるのでしょう。
by: fromishigaki * 2010/08/16 22:22 * URL [ 編集] | page top↑
--No title--

そうですよねぇ。
昔の人が住んでいた思いを
必ずしも受け継ぐわけではありませんが
古い石や柱などの部材は、
新しい世代の人たちに生きる知恵か何か深淵なものを
ひそかに授けてくれる、そんな感じがします。
by: カヌ太郎 * 2010/08/16 22:39 * URL [ 編集] | page top↑
--No title--

はい、心からそう思います
石も木も、膨大な時間の記憶を抱いていて、
そこに暮らしてきた何世代もの人々を見まもってきたんですよね。
はかない命の人間からすると、ほんとうに大いなる存在で…
ただそこにいるだけで、深い安らぎを感じます。
by: fromishigaki * 2010/08/17 09:02 * URL [ 編集] | page top↑
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